2025年3月31日月曜日

『ランボー』(1982年)「どこに行っても嫌われるベトナム帰還兵」

「金洋ロードショー:映画ブログ」ベトナム帰りの元・特殊部隊員がローカルな町で保安官とトラブルに。見所を紹介。


(YouTube)予告編

1.ベトナム帰還兵

『ランボー』(1982年)「どこに行っても嫌われるベトナム帰還兵」

ベトナム帰りのジョン・ランボー(シルヴェスター・スタローン)。久しぶりに戦友を訪ねたが、戦争の後遺症(枯れ葉剤の影響)でやせ細って死んだという。唯一の友人を亡くして寂しい状況で、あるローカルな町にたどり着く。その町の保安官ティーズル(ブライアン・デネヒー)はランボーを見た目の風貌で危険視。パトカーで町を追い払うがランボーはその扱いに立腹。まるでティーズルにケンカを売るかのような態度を取って逮捕。保安官事務所では手荒な扱い。ベトナム時代のトラウマがフラッシュバック。事務所の連中をぶちめのめして山に逃走。かつてのランボーの上官サミュエル・トラウトマン大佐(リチャード・クレンナ)が現場に駆け付け、山に立て籠もるランボーに投降を呼びかけるが・・・。


2.トリビア(キャスティング)

『ランボー』(1982年)「どこに行っても嫌われるベトナム帰還兵」

ディヴィッド・マレルの小説『一人だけの軍隊(ファースト・ブラッド)』を映画化したもの。監督テッド・コッチェフ、主題歌はダン・ヒル「It's a long road」。この小説は1972年に書かれたもの。「ベトナム戦、反対」の立場からマレルが執筆(マレルには従軍経験は無いらしい)。1970年代に多くの監督やスタジオが小説の映画化を試みた。ベトナム戦争がまだ続いていた頃は映画は制作されず。ランボー役には様々なスターが候補に。ロバート・デ・ニーロ、クリント・イーストウッド、ポール・ニューマン、アル・パチーノ、ダスティン・ホフマン。スティーブ・マックイーンは乗り気だったが、「若いランボー」を演じるには年を取りすぎていたため断念。時が経ち、再び制作の話が。当時、『ロッキー』以外はそこそこだったシルヴェスター・スタローンが出演希望。スタローンは脚本にも関与し、「ジョン・ランボー」というキャラクターをより共感できるものにすることに成功すると共に文句無しのアクションスターに。「トラウトマン大佐」役も様々な候補。リー・マーヴィンに断わられた後にカーク・ダグラスに決まったが、キャラクター設定への不満から降板。結局、リチャード・クレンナにオファー。「ティースル保安官(朝鮮戦争の帰還兵でもある)」役にはジーン・ハックマンとロバート・デュヴァルの名が上がったが、共に断った。個人的には結果的に出演することになったシルヴェスター・スタローン、リチャード・クレンナ、ブライアン・デネヒーがベストだったと考える(イメージにピッタリ)。


3.トリビア(撮影時の話)

『ランボー』(1982年)「どこに行っても嫌われるベトナム帰還兵」

ハードアクション作(予算1500万ドル)。舞台となった「保安官事務所」は当時、取り壊し予定だった銀行を使用。スタローン自ら多くの危険なスタント。洞窟のシーンでヤケドしたり、崖から落ちて木にぶつかって背中に重傷を負ったり(肋骨を数本骨折)。撮影に使用された銃器は全て本物。その多くはFBIやSWATから借用したもの。撮影中はこれらの武器は厳重な管理下に置かれたが、国際的な武器密輸組織によって盗まれた。この事件後、撮影現場はカナダ軍によって警備され、兵士らは映画のエキストラとしても出演。撮影が行われたのはカナダだったが、思わぬ大雪により制作が遅れるハプニング。契約条件により発生する高額な出演料の支払いを避けるため、リチャード・クレンナの出番がカットされたこともあったという。ラフカット版は3時間から3時間半の長さ。これでは長すぎる、ということで徹底的に再編集されて93分に。さらに問題。原作、試写会版、公開版でエンディングが異なるのは有名な話。原作、試写会版ではランボーは悲惨な最期。それではあんまりだ、ということで試写会後にエンディングの撮り直し。それが公開版になった。


4.解説

『ランボー』(1982年)「どこに行っても嫌われるベトナム帰還兵」

「ランボー」というのは原作者によるとリンゴの名前だそうだ。ランボーがリンゴ(果物)なら保安官は「草の名前」からということで「ティーズル(トゲのある植物)」。「ティーズル」から「ル」を取り除くと「ティーズ(いびる、いじめる、の意)」。「トラウトマン」の「トラウト」は「マス釣り」の意。要するにマスを釣るかのように人を釣る(翻弄する)の意味が込められているそうだ。ランボーが保安官に不審者扱いされるシーン。これは当時のアメリカではよくあったことなのだそうだ。髪の長い、いわゆる「ヒッピー」のような連中は田舎町では嫌悪され、場合によっては逮捕。ランボーがされたような扱いを受けることもあったらしい。原作のランボーはかなりの殺人マシン。大勢を死なせるストーリー。そのため原作ではランボーは最後に悲惨な死に方。ランボーが山に逃亡する演出。なぜ山に逃げたのだろう? 町の方が物資に困ることもなければ危険も少なく、隠れる場所も確保しやすいはず。これは「山が持つ不思議なパワー」を表現するためらしい。モーセが十戒を受けた逸話があるように欧米人には「山への信仰」がある。ランボーは「山のパワー」で潜在能力を甦らせて町で復讐する、という演出だったという。ランボーに対してかなり執拗だった保安官ティーズル。ランボーはベトナム帰還兵。ティーズルは朝鮮戦争の英雄。ティーズルとしては「ナメられてたまるか」といった意地がある。二人の争いは「世代間の争い」でもあった。

-------------

Amazonショッピングサイトのリンクです。

ランボー・トリロジー 4K Ultra HD Blu-ray BOX (6枚組)

-------------------

ランボー 最後の戦場 [Blu-ray]

2025年3月15日土曜日

『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)「あの黒人王者に息子が」

「金洋ロードショー:映画ブログ」世界王者の息子が引退したボクサーを訪ね、新たなストーリーが。トレーニング、トラブル、壮絶な試合。見所を紹介。


(YouTube)予告編

1.隠し子

『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)「あの黒人王者に息子が」

アドニス・ジョンソン少年。何とあのアポロ・クリード(元プロボクシング世界ヘビー級王者)の息子。アポロには妻メアリー・アン(フィリシア・ラシャド)がいるが、アドニスは外の女との間にできた子。少年院のアドニスを訪ねたメアリー・アンは彼を養子に。青年になったアドニス(マイケル・B・ジョーダン)。オフィスで働いて安定した収入を得る生活だが、コッソリ試合に出場。父と同じ道に進みたいようだ。


2.伝説の男

『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)「あの黒人王者に息子が」

メキシコのローカル試合に出場してきたアドニスだが、ボクシングは自己流。プロのテクニックを持った相手には敵わない。本格的にボクシングを学ぶためロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)を訪ねるが、ロッキーは心身共に不調。アドニスの指導をするつもりは全く無い様子。


3.トリビア

『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)「あの黒人王者に息子が」

ライアン・クーグラー監督の新シリーズ。事実上の『ロッキー7』。あのロッキーもさすがに参っている状況。身内が次々に亡くなり、自身も体を壊している。そんな状況であのアポロの息子アドニスと初対面。アドニス「ボクシングを教えて欲しい」という。どうなるか? 今作で重要な役割を果たしたメアリー・アン。演じるのはフィリシア・ラシャド。パート2と4で「メアリー・アン」を演じたシルビア・ミールズとは別人(ミールズは2011年に死去)。アドニスが大一番で戦う「リッキー・コンラン」役はアンソニー・ベリュー(本物のボクサー)。フィラデルフィアのシーンでは空き店舗をボクシングジムに改装してトレーニングシーンが撮影された。試合のシーンはこのシリーズおなじみ「リアルな臨場感」を実現。映画にドラマ性を求める評論家はこの作品を高く評価。パート3や4が酷評されたのとはエラい違い。ボクシングファンからするとシリーズ全てが素晴らしかったように思えるが・・・。

-------------

Amazonショッピングサイトのリンクです。

クリード チャンプを継ぐ男 [4K ULTRA HD + Blu-ray]

クリード 炎の宿敵 [Blu-ray]

クリード 過去の逆襲 (4K ULTRA HD&ブルーレイセット)(2枚組)[4K ULTRA HD + Blu-ray]

2025年3月4日火曜日

『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006年)「引退したボクサーが燃える対象を求めて」

「金洋ロードショー:映画ブログ」引退後のボクサー。家族を亡くし、抜け殻のような日々。生きる目的を捜す。見所を紹介。

(YouTube)予告編

1.引退後
『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006年)「引退したボクサーが燃える対象を求めて」

60歳になった元プロボクシング世界ヘビー級王者ロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)。経営するレストランはそれなりに繁盛しているが、寂しいことに妻エイドリアンはもういない(元々「体が弱い」という設定のキャラだった)。義兄ポーリー(バート・ヤング)は精肉工場を解雇(「高利貸しの手先」だった頃もあったが)。息子ジュニア(マイロ・ヴィンティミリア)は相変わらずイジけた性格で、親と比較されることにウンザリしている。かつて少女だったマリー(ジェラルディン・ヒューズ)は今ではシングルマザーで苦労している。フィラデルフィアの町も寂れた雰囲気。全てが寂しくなっていく状況でロッキーは「生きがい」を求める。

2.世界王者
『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006年)「引退したボクサーが燃える対象を求めて」

世界ヘビー級王者メイソン・ディクソン(アントニオ・ターバー)。実力者ではあるが「ライバル不在」のため、人気が盛り上がらない。それどころか「ロッキーより劣る」と評価する者も。そんなディクソンがロッキーとエキシビションで対戦することに。トレーナーのデューク(トニー・バートン)のアドバイスを受けてハードなトレーニングを積むロッキーだが、試合の内容は?

3.トリビア
『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006年)「引退したボクサーが燃える対象を求めて」

スタローンが監督・脚本・主演を務めたシリーズ完結編(続編の構想があるらしい。ロッキーがアメリカに不法滞在するボクサーと出会う話だそうだ)。『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年)でロッキーを殺すつもりだったスタローン。しかし、気が変わって脚本変更。その後、「5」の内容・興行結果にスタローンは後悔する気持ちが高まって『ファイナル』の製作開始。その内容に関して映画ファンは概ね好評。スタローンも「満足な出来」とコメント。注目のキャスティングはアントニオ・ターバー(本物のボクサー。元世界ライトヘビー級王者)。スタローンは当初、ロイ・ジョーンズ・ジュニア(ターバーのライバル)にディクソン役を頼もうとしたが、ジョーンズと連絡が取れず。ターバーを抜擢。他、マイク・タイソン、リングアナウンサーのマイケル・バッファー、レフェリーのジョー・コルテスが本人役で出演。「スパイダー・リコ」は一作目に登場したキャラ(フィラデルフィアのローカル試合でロッキーと戦う役)。今回、30年ぶりに登場。演じたのは当時と同じく、元ボクサーのペドロ・ラヴェル。「ロッキー・ジュニア」役はセイジ・スタローンが候補だったが、スケジュールの関係で出演できず。ボクシングファンのスタローンは試合の演出にもこだわり。ロッキーとディクソンの試合シーンの撮影は実際の試合会場でHBOが放送する「バーナード・ホプキンス vs. ジャーメイン・テイラー」の前に行われ、観客は大歓声でスタローンらを応援したという。リアルなファイトシーンを撮るためスタローンとターバーは本当にパンチを交換。脚本よりも早く顔が腫れたり、鼻血が出たりのハプニング。スタローンはターバーのパンチで何度も失神しそうになったという。また、ターバーもスタローンの意外なパンチ力に驚いたそうだ。「アナザー(もう一つの)エンディング」があり、オリジナルとは「試合結果」が異なる。シリーズは一応、これで終了。しかし、事実上の『ロッキー7』である『クリード チャンプを継ぐ男』(2015 年)が製作されるなど、まだまだシリーズは続きそう。
-------------
Amazonショッピングサイトのリンク。パート1から6(『ロッキー・ザ・ファイナル』)を収録した決定版。

ロッキー:アルティメット・ノックアウト・コレクション(4K ULTRA HD)      

2025年2月15日土曜日

『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年)「引退したボクサーに次々と災難が」

「金洋ロードショー:映画ブログ」激しい試合を繰り返してきた世界王者が引退。しかし、トラブルが相次ぐ。見所を紹介。

(YouTube)予告編

1.新たな危機
『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年)「引退したボクサーに次々と災難が」

プロボクシング世界ヘビー級王者ロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)。モスクワでアマチュア世界王者イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)をKO。しかし、脳にダメージ。さらにバカな義兄ポーリー(バート・ヤング)がやらかし、全資産を失う。最悪の状況でオクラホマから出てきたヘビー級、トミー・マシン・ガン(トミー・モリソン)と出会う。新しい「人生の目標」が必要だったロッキー。亡くなったミッキー(バージェス・メレディス)が残してくれたジムを再開し、トミーを指導することに。

2.キャラクター
『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年)「引退したボクサーに次々と災難が」

絶頂から再びドン底に落ちたロッキー。「やり直し」を勧める妻エイドリアン(タリア・シャイア)。ロッキー・ジュニア(セイジ・スタローン)はイジけた性格で、転落した生活にストレス。ポーリーは相変わらずロッキーの足を引っ張るダメキャラ。トミーは素直だったが、次第に自信を付けて尊大になっていく(イヤな奴)。ボクシング・プロモーターのジョージ・ワシントン・デューク(リチャード・ガント)は「大きな興行」をすることしか考えず、脳にダメージがあるロッキーをカムバックさせようとする。デュークと契約している若いヘビー級、ユニオン・ケインはロッキーが返上した空位の世界ヘビー級タイトルを獲得。ロッキーとの対戦を希望。

3.トリビア
『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年)「引退したボクサーに次々と災難が」

『ロッキー4/炎の友情』(1985年)から時間が経って制作された第五弾。監督は一作目のジョン・G・アヴィルドセン。スタローンは脚本・主演。残念なことに興行収入では期待を下回り、シリーズ中最低(全世界での収入は悪くはなかった)。ストーリーを映画ファンから酷評され、スタローン自身も作品の出来に不満。そのためか続編の『ロッキー・ザ・ファイナル』の製作は2006年となった(余程「ロッキー」にウンザリしたようだ)。脚本は当初のものとは大きく違う。この「5」をシリーズ最終作にしようと考えていたスタローン。オリジナルの脚本ではロッキーはトミーとの戦いで痛めつけられ、路上でエイドリアンの腕の中で死んでいく構想だった。スタローンを「成功者」にした「ロッキー」というキャラ。スタローンがロッキーを殺そうと考えたのはなぜなのか? 引退、破産、家庭の不和、後遺症。ボクサーのリアルな悩みを描いた映画。個人的にはそんなに悪い映画だったとは思わない。キャスティングも充実。パート3で死亡したミッキーが回想シーンで登場。悪徳黒人プロモーター「デューク」はドン・キングがモデル(よく似てる)。トミー・モリソンは本物のボクサーでWBO世界ヘビー級王者になったが、2013年にエイズの合併症で死去(44歳没)。ロッキーの次の世界王者になった「ユニオン・ケイン」を演じたマイケル・ウィリアムズもヘビー級ボクサー。コチラはパワー不足のため現実世界では世界王者にはなれず。ロッキー・ジュニア役のセイジ・スタローンはスタローンの実子。後、『デイライト』(1996年)でも親子共演。しかし2012年、心臓発作で死去(36歳没)。一作目『ロッキー』(1976年)で「少女マリー」を演じたジョディ・レティシアは「落ちぶれた売春婦」役でこの「5」に登場予定だったが、カット(最後のストリートファイトのシーンに少しだけ登場しているらしい)。「少女マリー」は続編『ロッキー・ザ・ファイナル』に登場。ジョディ・レティシアではなく、ジェラルディン・ヒューズがこの役を演じた(「苦労しているシングルマザー」の役)。ロッキーは「5」ではリングに上がらなかったが、代わりにトミー・ガンとユニオン・ケインが好ファイト。試合のシーンの一部はフィラデルフィアの「ブルーホライゾン」で撮影された(この会場は1970年代にボクシングで大いに栄えていたらしい)。ジョン・G・アヴィルドセンがオンラインのみでディレクターズ・カット版を公開。未公開シーンが追加されるなどファンにとっては関心のある内容。しかし、DVDなどでのソフト化はされていないようだ。
-------------
Amazonショッピングサイトのリンク。パート1から6(『ロッキー・ザ・ファイナル』)を収録した決定版。

ロッキー:アルティメット・ノックアウト・コレクション(4K ULTRA HD)     

2025年2月11日火曜日

『ロッキー4/炎の友情』(1985年)「プロとアマの世界王者がモスクワで激突」

「金洋ロードショー:映画ブログ」世界王座を取り戻したばかりの王者が「最強のアマボクサー」と極寒のモスクワで死闘。見所を紹介。

(YouTube)予告編

1.ソ連がやって来た

『ロッキー4/炎の友情』(1985年)「プロとアマの世界王者がモスクワで激突」

プロボクシング世界ヘビー級王者ロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)。クラバー・ラングから世界王座を奪回。そんな状況であのソ連がプロボクシングに参入するというニュース。アマチュア世界王者イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)が妻ルドミラ(ブリジット・ニールセン)、補佐役ニコライ・コロフ(マイケル・パタキ)らと渡米。目的はプロの選手とエキシビションを行って実力をアメリカに見せつけること。ドラゴがマスコミの前で驚異的なパンチ力をデモンストレーション。ヘビー級ボクサーが耐えられるより遙かに強いパンチをマシンに打ち込む。


2.元・世界王者

『ロッキー4/炎の友情』(1985年)「プロとアマの世界王者がモスクワで激突」

過去の栄光が忘れられない元・世界王者アポロ・クリード(カール・ウェザース)。ドラゴのエキシビションの相手に名乗り。ロッキーはそれに反対するが、アポロは記者会見でドラゴを挑発するなど絶好調。しかし、エキシビションだというのにドラゴはアポロに容赦ない攻撃。


3.復讐

『ロッキー4/炎の友情』(1985年)「プロとアマの世界王者がモスクワで激突」

無惨なKO負けを喫したアポロ。ロッキーはドラゴに復讐を誓うが、妻エイドリアン(タリア・シャイア)は猛反対。保持する世界王座の問題もある。何とモスクワでドラゴと勝負。サポートするのは義兄ポーリー(バート・ヤング)、アポロのトレーナーを務めてきたデューク(トニー・バートン)。雪深い山でロッキーは体を徹底的に鍛えてリングへ。


4.トリビア

『ロッキー4/炎の友情』(1985年)「プロとアマの世界王者がモスクワで激突」

監督・脚本も務めたシルヴェスター・スタローン。しかしながら、「アメリカこそ正義」といった「プロパガンダ」的な内容であったことや「ミュージック・ビデオ」のような内容であったことから映画評論家の中には作品を酷評する者も。個人的には高評価。ファイティングシーンの迫力、音楽シーンが効果的であったことなどが理由。この四作目の製作は「3」の成功後すぐに開始。「ドラゴ」を演じたドルフ・ラングレンは「背は高いが体の線が細すぎる」として一度は候補から外されたが、スタローンと共にウエイトトレーニング。増量に成功。ドラゴ役に決定。キャストはおなじみタリア・シャイア、カール・ウェザースら。アポロの妻「メアリー・アン」役でシルヴィア・ミールズ(『ロッキー2』以来、2度目の登場)。面白いのがゴルバチョフ書記長役でデビッド・ロイド・オースティン。「ゴルバチョフのそっくりさん」で有名で、『裸の銃を持つ男』にもゴルバチョフ役で出演(「頭のシミ」をイジられるシーン)。ロッキーがポーリーにプレゼントするロボットもまた「出演者」。マシンながら「全米映画俳優組合」のメンバーだそうだ。「ミュージック・ビデオのようだ」と言われた映画だけあって音楽が充実。サバイバーやジェームス・ブラウンらが参加。「Heart's on Fire」や「Living in America」などのヒット曲。ドラゴがトレーニングするシーンに登場するハイテクスポーツ用具は「未来のトレーニング」といった感じで良いデモンストレーションに。実際にロッキーをマネてハードなトレーニングをしたアスリートも(当時)。「ソ連のシーン」はアメリカで撮影(ワイオミング州ほか)。トラブルもいろいろ。脚本に関して著作権訴訟。脚本を書いたが却下された男がおり、「完成した映画が自分の脚本と似ている」と訴え。しかし、「無許可で書いたモノ」として権利を認められず。撮影では(何があったか)ラングレンがウェザースを投げ飛ばす暴挙。ウェザースはラングレンに罵声を浴びせ、エージェントに電話して映画を降板すると発表。スタローンが間に入って撮影再開。「ロッキー vs. ドラゴ」を迫力のあるものにするため、スタローンとラングレンは全力でパンチの交換。ところがスタローンの胸に強いパンチが当たり、スタローンは集中治療室に入院(ラングレンではなく代役のパンチだったという説も)。当時のアメリカ大統領ロナルド・レーガンはスタローンをホワイトハウスに招いて本作を絶賛。一方、ソ連のメディアは「あからさまな反ソ、反共プロパガンダ映画」としてスタローンを非難。製作中にスタローンとブリジット・ニールセンが婚約。公開後すぐに結婚した。1986年の映画「コブラ」で再び共演したが、1987年に離婚。賛否両論のパート4。何と「ディレクターズカット版」なるものが公開された。約38分の未公開映像(アポロの葬儀シーンなど)を紹介するためのものだったようで、オリジナル版を大幅にカットして未公開映像を挿入。カットされたのは「ロボットが登場するシーン」(ロボットに関する著作権料を節約するため、と言われている)、「ブリジット・ニールセンが登場するシーン」(離婚したから?)。アクション&音楽の映画ですが、ドラマ的なシーンもしっかり。シリーズが続くたびに登場人物が亡くなるのが残念ですが、人生をリアルに表現するとこういう形になるのでしょう。

-------------
Amazonショッピングサイトのリンク。パート1から6(『ロッキー・ザ・ファイナル』)を収録した決定版。

ロッキー:アルティメット・ノックアウト・コレクション(4K ULTRA HD)    

2025年1月18日土曜日

『ロッキー3』(1982年)「絶頂期の世界王者&虎の目を持つ男」

「金洋ロードショー:映画ブログ」10連続防衛の世界王者が「最強の黒人」に壮絶なKO負け。見所を紹介。

(YouTube)予告編

1.調子に乗る男

『ロッキー3』(1982年)「絶頂期の世界王者&虎の目を持つ男」

プロボクシング世界ヘビー級王者ロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)。アポロ・クリード(カール・ウェザース)から王座を奪って以来、五年間勝ち続けて10度防衛。スッカリ大物になり、かつてのような「純真さ」は消え失せた。以前トチったCMの仕事も今では余裕でこなし、妻エイドリアン(タリア・シャイア)との関係も良好。公私ともに絶好調。そんな状況で連勝中の強打者の挑戦を受けることに。しかし、トレーニング中にカメラマンの撮影に応じたり、美女にキスされたりで全く練習に集中できていない。


2.最強の挑戦者

『ロッキー3』(1982年)「絶頂期の世界王者&虎の目を持つ男」

ロッキーに挑戦するクラバー・ラング(ミスターT)。モヒカン刈りの黒人で、ハードパンチャー。このところ荒っぽいKO勝ちを続けている。性格も荒く、世界王者ロッキー、元王者アポロに敬意を払わない。本編で語られることはなかったが、ラングは幼い頃に孤児となり、路上、孤児院、少年院で過ごしてきた過去。成人後に重罪で 5 年間刑務所で服役。そこでボクシングを習い、出所後は「フラストレーションを発散する手段」としてリングに上がってきた。誰も信用せず、ただひたすら相手を破壊することを望む「野獣」と化している。


3.トリビア

『ロッキー3』(1982年)「絶頂期の世界王者&虎の目を持つ男」

スタローンが脚本、監督、主演を務めた名作。一作目とは違って「成功したロッキー」は少し鼻につくキャラ。しかし、思いっ切りブチのめされたことで「本来のロッキー」に。パート2の公開直後にスタローンは「3」の準備。厳しい食事制限&トレーニングで体を絞った。「クラバー・ラング」役は当初、本物のボクサーであるジョー・フレージャーとアーニー・シェイバースの名が上がったが、共に「声」に問題があるということで見送られた。ミスターTはモハメド・アリのボディガードを務めたことがあり、演技の経験もある。イメージにピッタリなことからラング役に決定。特別出演でハルク・ホーガン。しかし、所属するWWFの許可を得ずに出演したことで、WWFから干された。新たな戦場「AWA」で活躍。シリーズのレギュラー、ポーリー(バート・ヤング)は相変わらず困った奴。ロッキーのトレーナー、ミッキー(バージェス・メレディス)はロッキーとラングを戦わせたくない様子。ボクシングのシーンでは本物のリングアナ、ジミー・レノンが登場。レフェリー役でマーティ・デンキン、ルー・フィリッポ(本物のレフェリー)。当時はまだ売れていなかったモーガン・フリーマンが「ラングのトレーナー」役のオーディションを受けたが不合格。映画を大いに盛り上げた主題歌「アイ・オブ・ザ・タイガー」は大ヒットし、第55回アカデミー賞で最優秀オリジナル歌曲賞にノミネートされた。映画で流れる「アイ・オブ・ザ・タイガー」は「デモ版」で、「完成版」はサウンドトラックに収録された、とのこと。「3」の撮影のために制作されたロッキー像はその後フィラデルフィアに寄贈された。この作品を低評価する者もいるが、「ロッキーとエイドリアンの浜辺での会話」など感動的な名シーンもある。傑作なのは間違いない。

-------------

Amazonショッピングサイトのリンク。パート1から6(『ロッキー・ザ・ファイナル』)を収録した決定版。

ロッキー:アルティメット・ノックアウト・コレクション(4K ULTRA HD)   

2025年1月9日木曜日

『ロッキー2』(1979年)「ボクサーの悲哀を描いた名作」

「金洋ロードショー:映画ブログ」世界王者と互角の勝負をやった4回戦ボクサーが再び世界王座に挑む続編。見所を紹介。

(YouTube)予告編

1.再びリングへ

『ロッキー2』(1979年)「ボクサーの悲哀を描いた名作」

プロボクシング世界ヘビー級王者アポロ・クリード(カール・ウェザース)に挑戦して善戦したロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)。しかし、網膜剥離で引退。アポロ戦のファイトマネーに加え、CMの仕事のギャラが入ってくる予定。派手にカネを使うロッキーだが、慣れないCMの仕事をトチって金欠。妊娠した妻エイドリアン(タリア・シャイア)を心配させるなどつらい状況に。


2.キャラ

『ロッキー2』(1979年)「ボクサーの悲哀を描いた名作」

前作の登場人物が再登場。エイドリアンの兄であり、ロッキーの義兄ポーリー(バート・ヤング)は高利貸しトニー・ガッツォ(ジョー・スピネル)の子分に。ロッキーのトレーナー、ミッキー(バージェス・メレディス)はアポロとの再戦に挑むロッキーをトレーニング(ニワトリを使用する珍シーンも)。他、ロッキーにウンザリするCM監督、ロッキーを祝福する神父(ポール・ミカーレ)。


3.屈辱

『ロッキー2』(1979年)「ボクサーの悲哀を描いた名作」

前回、ロッキーにダウンを食らった末に判定勝ちしたアポロ。ファンから「お前は負けた」という辛辣な手紙をもらってしまう屈辱。引退したロッキーを強引にでもリングに上げ、大観衆の前で叩きのめす意向。そんなアポロをサポートするのはデューク(トニー・バートン)。いつも冷静に状況を分析する頼りになるトレーナー。


4.トリビア

『ロッキー2』(1979年)「ボクサーの悲哀を描いた名作」

パート2。一作目のヒット後にスタローンは続編の脚本を執筆。一作目ではジョン・G・アヴィルドセンが監督を務めたが、今回は他の作品の制作で忙しかったため監督できず。スタローンがメガホンを取り、監督・脚本・主演の三役を務めることに。「ユナイテッド・アーティスツ社」はスタローンが監督することに消極的。それはスタローンが監督した『パラダイス・アレイ』がヒットしなかったから。結局、スタローンが監督。作品がヒットしたことでスタローンは監督としても大きく前進。このシリーズは何かとハプニング。しかし、それをアイデアでカバー。「ロッキー」のモデルとなったチャック・ウェプナーをロッキーのスパーリングパートナー役に望んだスタローンだが、断念。ウェプナーは薬物により精神的に俳優の仕事ができる状況ではなかったらしい。スタローン自身もベンチプレスで右胸筋を負傷するトラブル。そのためサウスポースタイルで戦うことができず、「アポロを驚かせるため、ロッキーが右利きで戦う」というストーリーに変更した。この作品でも重要な役どころを演じたタリア・シャイア。しかし、当時はドラマ出演で多忙。そこでスタローンは新しいシナリオ。「昏睡状態になったエイドリアンは回復後、自宅で夫の勇姿を見守る」に変更され、タリアの出番を少なくした。しかし、むしろこの変更によって逆に大変、感動的なシーンとなった。実際のボクサーも「栄光と挫折」。『ロッキー』シリーズはフィクションながら「ボクサーの人生」を実によく表現している。それはスタローン自身が試合を会場で観戦したり(「ケン・ノートン vs. ラリー・ホームズ」をリングサイドで観戦する姿が有名)、選手を実際にプロモートしたりするほどの熱心なボクシングファンだからだろう。

-------------

Amazonショッピングサイトのリンク。パート1から6(『ロッキー・ザ・ファイナル』)を収録した決定版。

ロッキー:アルティメット・ノックアウト・コレクション(4K ULTRA HD)