2024年12月6日金曜日

『ゾンビ』(1978年)「ショッピングモールでの死闘&大量消費後の倦怠感」

「金洋ロードショー:映画ブログ」あれから十年後の世界を描いた恐怖映画。ゾンビが人間を圧倒。生き残った人間のむなしい戦い。見所を紹介。


(YouTube)予告編

1.あれから十年後

『ゾンビ』(1978年)「ショッピングモールでの死闘&大量消費後の倦怠感」

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)で「動く死者:ゾンビ」が人間を襲う恐怖。完全に事態は制圧されたかと思われたが、そうではなかった。政府が機能不全。にもかかわらず、「死人が人を襲うなど信じられない」などと未だに言う者もいる。テレビ局勤務のフランシーン・パーカー(ゲイラン・ロス)とスティーブン・アンドリュース(デビッド・エンゲ)のカップル。局のヘリを無断で借用し、郊外に脱出しようとする。その後、フランシーンは妊娠中であることが判明。


2.SWAT

『ゾンビ』(1978年)「ショッピングモールでの死闘&大量消費後の倦怠感」

過激派マルチネス一味が立て籠もるアパートを急襲する警察特殊部隊SWAT。アパートは何とゾンビだらけ。メンバーを失いながらも何とか過激派&ゾンビを始末。友人スティーブンと一緒に町を脱出する予定の隊員ロジャー・デマルコ(スコット・H・ライニガー)。別班の隊員ピーター・ワシントン(ケン・フォリー)を誘って一緒にスティーブン操縦のヘリに乗り込む。


3.ツッコミどころ

『ゾンビ』(1978年)「ショッピングモールでの死闘&大量消費後の倦怠感」

「恐怖の映画」であると同時に珍シーンも。ゾンビが当たり前のようにいる世界。しかし、まだそれを信じない者がいる(外出しないのか?)。過激派マルチネス一味が立て籠もるアパート。ゾンビと住人が共存している状態(それは不可能)。ゾンビがうようよいるところで大ハシャギするロジャー(「危ない」と思ったら、やっぱり)。ショッピングモールに乱入するバイク野郎ども。略奪するだけ略奪して去っていく賢明な者もいれば、周りをゾンビに囲まれているのにゲーム機で遊んでいるアホすぎる奴も(「危機が迫っているのに気付かない愚か者」キャラ)。


4.トリビア

『ゾンビ』(1978年)「ショッピングモールでの死闘&大量消費後の倦怠感」

グロテスクなシーンもある問題作。それが今やカルト的な人気で「名作」扱い。監督はジョージ・A・ロメロ。友人が経営する「モンロービル・モール」を訪問したロメロ。「ピン」と来るものがあったらしく、この映画の脚本を書き上げた。しかし、製作費の問題。イタリアの映画監督ダリオ・アルジェントはロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のファン。国際配給権と引き換えに資金面でロメロに協力。ロメロが英語圏、アルジェントが「それ以外の地域」の市場向けにこの映画を編集。この映画には複数のバージョンがあるが、それは制作にアルジェントが関与したことが大きい。また、ロメロは様々なシーンを多数のアングルで撮影。多くの映像を撮ったことも複数のバージョンを生み出す結果につながった(ロメロ版とアルジェント版は「長さ」だけではなく、音楽に特に違いがある)。「世界初公開」はアルジェントによってイタリアで。この映画が面白いのはショッピングモールが舞台であること。いっぱいの商品。経営者は死亡、または脱出。ゾンビだけになったモールでピーターらは好きな商品を好きなだけモノにできるのだ。しかし、そのことで次第に倦怠感。どうやら人間は満足し過ぎるとダメになってしまうようです。モールでの撮影は営業中のモールが閉店後に開始され、明け方まで。年末はモールに飾り付けなどがほどこされたりするため撮影を中断。映画とは違って舞台となったモールには銃砲店は無し。また、「ピーターらが立て籠もる部屋」はモールとは別の場所にある。映画には様々なゾンビ。おっちゃんゾンビもいれば、若けぇ女ゾンビ、子供ゾンビもいる。顔を灰色がかった色に塗ってるだけのゾンビから崩れた顔のゾンビまで。特殊メイクはトム・サヴィーニが担当。サヴィーニは『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』にも参加したかったが、ベトナム戦争従軍のため叶わず。今回、初めてロメロと組んで仕事。後にロメロの『死霊のえじき』に出演するジョセフ・ピラトが「ボートで避難する警官団のリーダー」役で出演。しかし、劇場公開版では登場シーンの大半がカットされた(悲しい)。非常に残酷な映画。そのため「血」は明るい蛍光色に。リアルすぎるのではなく、映画に「コミック感」をロメロは出したかったらしい。エンディングがオリジナルの脚本と大きく違うのも有名な話。制作中に結末を変更することに決定。元々はモールに避難したピーターらは全滅する予定。特に悲惨なのが「フランシーンがヘリに突っ込んで死亡する」というラスト。そのシーンのために作られた「頭部(中身は食品)」はエンディングではなく、過激派のアパートのシーンで使用。ホンモノのショットガンで撃たれた「頭部」は爆発するかのように見事に吹っ飛んだ。評論家はこの残忍な映画を散々けなしたが、「現代の消費社会を風刺している」と肯定的に評価する者も。「単なるゾンビ映画」にならずに済んだのはそういった「メッセージ性」が上手く表現されていたからだと思われる。

-------------

Amazonショッピングサイトのリンクです。ホラー映画のソフトは廃盤になりがち。新品で入手したい方はお早めに。

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド <4Kリマスター版>  [Blu-Ray] 

---------------------

ゾンビ 製作45周年コレクターズ・エディション [Blu-ray]

---------------------

死霊のえじき 通常版 [Blu-Ray] 

0 件のコメント:

コメントを投稿